横峯さくらは“子育てと仕事の両立”に価値を見出している。「アメリカに行った時に、(ツアーに帯同する)託児所があった。子育てしながら第一線で活躍している選手がたくさんいたのを間近で見て、『私もそうなれたらいいな』と思いまして」。
そして2021年に長男を出産後、わずか3ヶ月でツアーに復帰した。「私がアメリカでそういう生き方が良いなと刺激を受けたみたいに、『さくらさんが子供を連れながらやってたから私もそういうことができるかな』って、若い選手の将来的な選択肢の一つになれたらうれしいです」という。
それでも、本音があふれた。「女性アスリートが出産するタイミングって、すごく難しい」。出産後には骨盤が広がった事で、当たり前のようにできていた腹筋ができなくなった。体型を戻す作業から始まり、出産前のゴルフの感覚を取り戻すことに試行錯誤が続いている。
長男の世話をする事で、出産前より練習時間を減らさざるを得なかったことにも戸惑った。自ら望んで決断したとはいえ、子育てとの両立は想像以上に難しかった。
「米女子ツアーの選手たちは何歳ぐらいで出産しているんでしたっけ?」と首をかしげた。その正解が分からないままだが、時間が解決してくれたことはある。「息子が成長してきて、夜泣きもなくなって、(効率よく練習する)ルーティンも分かってきて、復帰してから今が一番、ゴルフに集中できています」。昨年よりショットの調子が良いと自負している。
3月7~10日開催の「明治安田レディス ヨコハマタイヤゴルフトーナメント」に出場する。 自身にとって、今シーズン初めての試合だ。昨年はメルセデス・ランキング106位でシード権を獲得できず、出場資格を懸けたファイナルQTに出場し、QTランキングは40位。シーズン序盤はある程度の試合に出場できる見込みだという。
自分のため、家族のため、後輩たちの未来のため。09年の賞金女王は虎視眈々と優勝を狙う。(取材・文/南しずか)